2009年10月27日

【杖のように利用できる階段の手すり - 京王線調布駅】

京王線の調布駅で、こんな手すりを見かけました。

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改札口から外へ出るための階段です。

初めて見た瞬間は、「面白いデザインだな、手すりが波線になってる」と思ったのですが、手すりのついている壁に貼ってあったボードが目に留まり、これはデザイン性を求めたものではなく、「杖のように利用できる」ことを知りました。

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たしかに。

波状の手すりを実際に力を入れて握ってみると、垂直方向に力を入れることができ、歩きやすそうです。

たとえば、捻挫など怪我をしたときの階段の昇降を思い出してください。
階段を昇る動作はそれほどでもないのですが、階段を下りる動作のときに予想外に足に重力がかかり、ひどく痛みを感じたり。
足というものは、普段意識している以上に負担がかかっているのではないでしょうか。

ありふれた階段の手すりのように傾斜をつけた1本の長い棒だと、「手すりを掴む」という感覚ですが、
波状に成形した手すりだと、各段で「体重を手すりに預ける」という感覚になります。

手すりがそれほど必要ないと思う時にはにはどちらでも良いのかもしれませんが、
手すりを必要とする時には使いやすいものになります。
そしてこれは結果なのかもしれませんが、波線が軽やかなリズムを生み出し、視覚的にも楽しさがある。

ユニバーサルデザイン、バリアフリー、Webのアクセシビリティなど、障害を持った人への配慮という観点で語られることが多いと思いますが、言葉そのものは本来、そのような意味を単独で持つものではないと思います。

ある物を使おうとする人であれば、誰にでも、どんな条件でも、使えること、使いやすいこと。・・・「誰にでも」というところがポイントだと思います。
特定の条件の人向けに作るのではなく、さまざまな条件への適応を包括して作るということ。

ちなみに、この手すりは滋賀県立大学工学部・人間融合工学チームとの共同研究。研究成果は「機械学会・振動学会」にて論文発表されているということです。
posted by SUMICO at 20:51| Comment(0) | ユニバーサルデザイン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年10月24日

【赤い羽根共同募金ポスター:赤のピクトグラムがなかなか可愛い】

毎年10月になると始まる赤い羽根共同募金。たまたま、外出先でポスターを見かけました。
白地に赤というシンプルな色使いが、却って目を引きます。

20091023-01.jpg


赤い羽根共同募金
http://www.akaihane.or.jp/

このポスターでは募金がどのような支援に使われるのかを、全て「赤」色(羽の色ですね)のピクトグラムで表現し構成しています。

20091023-02.jpg

以下、赤い羽根共同募金のWebサイト(http://www.akaihane.or.jp/content/topics/20091001.html)からの引用

(引用文ここから)
「じぶんの町を良くするしくみ。」をメインテーマにした今年のポスター、全国CMは、共同募金の使い途を分かりやすく知っていただくために、その事例を「アイコン」で表現しています。
(引用文ここまで)

ひとつひとつのアイコンは、これに決まるまでにどれだけデザインのダメ出しがあったかな?と思わず考えてしまいそうになります。
結構、絵としての表現がわかりやすく「そうそう」とうなずいてしまう。
個人的には、これはなかなかの傑作だと思いました。

駅など多くの人々が利用する施設内には、各種案内のためにさまざまなピクトグラムが使用されていますが、その多くはJISで規定されています。

参考:JIS Z 8210 「案内用図記号」
http://www.jisc.go.jp/
で、規格番号を入れて検索。

JISなどのガイドラインにしたがって案内表示を行うメリットは、利用者がどこへ行っても「このマークの意味は○○」という一貫した判断ができるようになる点でしょう。

でもこのポスターを見ていたら、もっと色々な案内表示があっても便利だったりするのにな・・・という気持ちにさせられました。

たとえば、この「手話・点字」のピクトグラムなど。

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公共施設の案内カウンターに手話のできるスタッフが常駐している場合、案内カウンターであるというマークのほかに「手話スタッフ有」のマークとして並べるとか。
もしかして、そういうのは既にあるかもしれませんが。

案内表示はあくまでも、案内表示であることが役割です。
それ自体が周りのさまざまなデザインにカメレオンのように溶け込んで認識しづらくなってしまうようでは、本来の役割を果たせません。
ただ、もう少し「そこにそれらが表示されていることの楽しさ」「付加的情報の提供」が加わってもいいのではないかと思うこともあり・・・。

もちろん、表示マークの数が多くなりすぎると却って認識しづらくなるという点はあります。
たとえば、人間が一瞬見て覚えられる数字の桁数の限界は5桁とか7桁とか、あるように。

実は、街中にあるさまざまなピクトグラムをじっくりと追ってみたことがありません。
いずれ、ピクトグラムをひたすら探して記録してくるお散歩をしてみたいです。
探してみるといっぱいありすぎて、日が暮れても帰ってこれない・・・なんてことになったりして。
posted by SUMICO at 00:29| Comment(0) | ポスター・看板 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年10月05日

【サイン(記号)に必要なもの - 色と形】

まず、「赤」というキーワードだけが与えられたとします。
そこから何を連想するでしょうか?

郵便ポスト、神社の鳥居、赤信号、りんご、さくらんぼ、赤ワイン、いちごジャム・・・etc.
もしかしたら日常見慣れているランドマークやモニュメントが真っ先に思い浮かぶ人もいるかもしれません。

このように「色」だけをトリガーとした場合、その多くは身の回りにある物や個人の経験によって学習されたものなど、さまざまな事項が紐づけられていて、多くの人に共通の、ひとつの事柄に結びつかないのが通常です。

ではそこから、多くの人に共通の認識に結びつけるには、何が必要か。

色々あるでしょうが、重要な要素として「形」が挙げられます。

一番わかりやすいのが、街の中や建物の中などのあちこちに存在している、目印や標識などのサイン(記号)です。
ここに何があるか。ここは何のための場所か。
そういったことを示すために、色と形の組み合わせが表示されていて、私たちはそれに従って判断し、行動します。

さまざまなサイン(記号)は、ほぼ一定の色と形の組み合わせで表示されています。そのことにより、多くの人に対して「共通の意味や意図」をもたらすことができるわけです。

簡単な例です。
赤と青が並んでいます。

赤と青が並んでいます

これは何を意味するでしょうか?
では、これではどうでしょうか?

赤と青の並び方、これではどうでしょうか

さらに、これではどうでしょうか。

化粧室の表示になります

・・・化粧室の表示ですね。
赤、青が同じ明度の無彩色になった場合も、これは化粧室の表示であることが分かります。

化粧室の表示が無彩色だった場合

とすると、形の方が大切なのかな?という気もしますが・・・
こうだった場合はどうでしょうか?

形と色の組み合わせが逆

・・・一瞬、迷いますよね。

このように、一定の意味や意図を紐づけるには、色と形の組み合わせが適切である、ということを念頭に置く必要がありそうです。

ここでいう「適切である」とは、何らかの規格があるのであれば、その規格に則っている、ということが主な意味です。

ご参考までに、化粧室のサインですが、日本では工業規格「JIS Z 8210 案内用図記号」の中に、規定されています。

http://www.jisc.go.jp/app/pager?id=58999
日本工業標準調査会の上記URLで、JIS Z 8210のPDFデータを閲覧できます。
ご興味のある方は、アクセスしてみてください。
なお、上記PDFは閲覧専用でダウンロードはできません。
posted by SUMICO at 20:15| Comment(0) | 色彩について | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする